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匿名組合

近年不動産証券化,流動化に関連して、株式会社に替わる投資形態として匿名組合が注目されています。

匿名組合契約とは、匿名組合員が営業者の行なう営業のために出資をし、営業者がその営業から得られる利益または損失を匿名組合員に分配することを約する契約を言います。
匿名組合契約は商法第3編 第4章に規定されています。



・匿名組合とは、当事者の一方が相手方の営業の為に出資をなし、その営業から生じた利益を配分すべきことを約する契約です。つまり、匿名組合員が営業者に出資をし、その経営の一切を営業者に委ね、組合員はその利益分配を受け取ることができます。
営業者と匿名組合員の2当事者の契約であり、3名以上の当事者の存在は認められず、団体性は認められません。
従って、匿名組合契約が複数併存しても、個別の契約であり各組合相互間には何らの法律関係も生じません。



・匿名組合は法律的には営業者の単独企業であり、財産は営業者の財産で、営業者の単独所有となり、営業者のみが営業の運営に当たり、匿名組合員には自ら業務を執行する権限はありません。
匿名組合員の出資は、営業者にとっては預かり金と認識されます。
また、現物出資を行った場合であっても、出資された現物ではなくて金銭出資された価額での返還となります。



・ 匿名組合員は法人でも個人でも、民法上の任意組合でもよく、商人でも非商人でもかまいません。



・ 匿名組合契約においては各匿名組合員の匿名組合出資金の元本が保証されているものではなく、営業者の営業の結果により、損失を被ることがあります。



・匿名組合契約には様々なリスクがあります。



・営業について営業者に委任されており、各匿名組合員が個別にその内容等に指図を行う事はできないため、営業が匿名組合員の想定どおりに行われない場合があります。



・契約期間中の途中解約に制限が設けられている場合があり、匿名組合員である立場を取引する市場は通常存在しないことから流動性に乏しい側面があります。

判例:株主代表訴訟と会社の補助参加の可否

(最高裁判所 平成13年 1月30日判決)
取締役会の意思決定が違法であるとして取締役に対し提起された株主代表訴訟において、株式会社は、特段の事情がない限り、取締役を補助するため訴訟に参加することが許されると解するのが相当である。
けだし、取締役の個人的な権限逸脱行為ではなく、取締役会の意思決定の違法を原因とする、株式会社の取締役に対する損害賠償請求が認められれば、その取締役会の意思決定を前提として形成された株式会社の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがあるというべきであり、株式会社は、取締役の敗訴を防ぐことに法律上の利害関係を有するということができるからである。


判例:従業員引抜行為と善管義務違反

取締役の従業員の引抜行為と取締役の善管義務違反、忠実義務違反
(東京高等裁判所 平成16年6月24日判決)

(1) 上記認定の事実によれば、被控訴人Y1は、遅くとも平成11年10月ころから、控訴人会社の従業員に対し、控訴人会社を退職して、被控訴人会社に入社するように働きかけていたものであり、取締役であった被控訴人Y2が平成12年7月10日には控訴人を補佐して控訴人会社を支えていく旨を述べながら一週間後には辞表を提出していることや、Aをはじめとする10名の従業員が、わずか三か月程度の短い期間に、家業の手伝いなどの理由で退職しながら、被控訴人会社に入社していることなどの事情に照らせば、これらの役職員は、自らの意思のみに基づいて、控訴人会社を辞めて、被控訴人会社に入社したと考えることは困難であり、控訴人会社の従業員が同時期にかつ大量に退職したことについては、被控訴人Y1の勧誘が主要な原因であったことは明らかというべきである。
そして、控訴人会社においては、前記のとおり、代表者である被控訴人Y1を中心とした家庭的な人間関係が築かれていたこと、退職した従業員の中には、辞職する理由につき、泣きながらやむを得なかった旨を訴えた者がいたこと等の前期の事情に照らすと、被控訴人Y1による従業員に対する働きかけは、それが絶対的強制とはいえないまでも、相当強力かつ執拗なものであり、従業員が、それまでの職場における人間関係などの事情から、その意に反して、控訴人会社を退職することを余儀なくされるような状況が作出されていたことが推認されるといわなければならない。
 ところで、被控訴人Y1は、当時控訴人会社の代表取締役の地位にあり、取締役として、善管注意義務及び忠実義務を負担し、控訴人会社の利益に反する行為をしてはならない立場にあった。
しかるに被控訴人Y1の上記勧誘行為は、BやCなどこれに応じなかった者もいながら大量の退職者が出たことを考えると、控訴人会社の営業や技術を担当するほぼすべての従業員を対象にしたものであったと解され、従業員がこの勧誘に応じれば、控訴人会社の営業や技術を担当する従業員がいなくなってしまうことになり、控訴人会社は、営業活動に支障を来し、また、顧客からのメンテナンス等の要請にも応じられなくなるなど、その事業遂行ひいては会社の存続に壊滅的な打撃を受けるであろうことは明らかであり、実際にも控訴人会社は、それに近い状況に陥ったことは、前記のとおりである(ことに、前記認定の事実によれば、被控訴人会社は、その大半の業務が、控訴人会社に納入するキャップアイシステムの製造であり、直ちに営業を行ったり、メンテナンスにあたる従業員を大量に採用する必要があったかは疑わしく、このことを考えれば、被控訴人Y1は、控訴人会社に対する害意を有していた可能性すら窺うことができる。)。
 以上のとおり、被控訴人Y1による前記引き抜き行為は、控訴人会社に対する善管注意義務、忠実義務に反する違法な行為というべきであるから、被控訴人Y1は、控訴人会社に対し、同行為によって控訴人会社が被った損害を賠償する義務があるというべきである。
 なお、上記従業員らが退職した時期は、被控訴人Y1が控訴人会社の取締役を辞任した後のことであることは前記のとおりであるけれども、前記認定事実によれば、被控訴人Y1の上記従業員に対する勧誘行為の主要な部分は、取締役在任中に行われていたものと認めるのが相当であり、したがって、被控訴人Y1の勧誘行為とその取締役退任後に発生した従業員の退職との間には相当因果関係があると認めるのが相当であるから、被控訴人Y1は、取締役辞任後の上記従業員らの退職についても、責任を免れないというほかない。

(2) 次に、被控訴人Y2の責任について検討するに、被控訴人Y2も被控訴人Y1とともに控訴人会社の取締役の地位にあったこと、他の従業員と呼応するかのように平成12年7月に突如控訴人会社を退職したこと及び平成12年2月ころ、被控訴人Y1やOがBに対して控訴人会社からの退職を働きかけた際に同席していたことを考えると、被控訴人Y2も、被控訴人Y1の前記引き抜き行為を知り、これに同調していたことは容易に推測することができるが、本件全証拠によるも、被控訴人Y2が従業員の引き抜き行為において積極的な役割を演じたり、これに加担したとまでは断定するに足りない。
しかしながら、被控訴人Y2も、被控訴人Y1と同様、取締役として、控訴人会社に対する善管注意義務、忠実義務を負っていたことは否定できないところであり、なおかつ、前記のとおり、被控訴人Y1が控訴人会社の従業員多数を被控訴人会社に移転させようとしていることを知っていたのであるから、少なくとも、この計画を阻止し、控訴人会社に損害が発生することを未然に防止する措置を講じなければならなかったというべきである。
しかるに、被控訴人Y1は、これを怠り、控訴人会社の多数の従業員が被控訴人会社に移転するという事態を招来させてしまったのであり、このような事情にかんがみれば、被控訴人Y2もまた、善管注意義務、忠実義務に違反したといわざるを得ないから、控訴人会社に対する損害賠償義務を免れない。

(3) さらに、控訴人会社は、被控訴人会社にも損害賠償責任がある旨を主張するので検討するに、被控訴人Y1による従業員らの引き抜き行為は、上記従業員らに控訴人会社を退職してその後被控訴人会社に就職するよう求めるもので、被控訴人会社にとっては、従業員の募集行為という業務の範囲に含まれるものということができる。
そして、被控訴人会社の代表者である被控訴人Y1による上記従業員らに対する引き抜き行為の態様は、前記のとおり、強力かつ執拗なもので、強度の違法性を帯びたものと評価し得るものであることにかんがみれば、上記引き抜き行為は、被控訴人Y1が、被控訴人会社の代表者として、その業務である従業員の募集につき、不法行為を行ったものとみるのが相当であり、以上によれば、被控訴人会社は、控訴人会社に対し、民法第四四条第一項に基づき、上記不法行為により控訴人会社が被った損害の賠償責任を負担するべき義務があるというべきである。

インサイダー取引

1. インサイダー取引とは?

上場会社等の会社関係者あるいは当該会社関係者から情報を得た者が、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす重要事実を知って、その事実の公表前に当該会社の株式等の有価証券の売買等の取引をすることをいいます。
 そして、会社関係者とは、役員、従業員、帳簿閲覧権を有する株主、契約締結者、会計士、弁護士などを指します。
 一般投資家はこのような重要情報を知ることができないのですから、インサイダー取引を規制しなければ、安心して投資することができなくなります。
そこで、一般投資家の保護を図り、有価証券の流通の流通を円滑にするために、証券取引法(以下条文を挙げる際には法律名を省略)、同施行令及び会社関係者等の特定有価証券等の取引規制に関する内閣府令は、以下のようにインサイダー取引を禁止しています。


2. 禁止される行為(インサイダー取引とされる行為)の内容

《 インサイダー取引図解 》
( 証券取引法 166条 証券取引法 167条)

【主体】 上場会社等又はその親会社・子会社の

a) 会社関係者(会社関係者でなくなった後1年以内のものも含む)
b) aからの情報受領者

・上場会社等又はその親会社の

a) 公開買付等関係者(公開買付等関係者でなくなった後1年以内のものも含む)
b) aからの情報受領者


・重要事実を知った者

・公開買付けの実施/中止の事実を知った者


【時期】

・ 重要事実の公表前

・ 公開買付事実の公表前


【行為】

・ 特定有価証券等の売買等をすること

・ 公開買付等に係る株券等の買付け・売付け等をすること

上記の表では、証券取引法166条及び167条の条文を便宜上簡略化したものです。
条文の詳細については、法文をご覧になってみて下さい。


※重要事実とは?

上場会社等(又はその親会社・子会社)の(1)重大な決定、(2)一定の事実の発生、(3)決算情報等をいいます。166条2項4号・8号は、重要事実について、投資者の投資判断に著しい影響を及ぼす行為を包括的に禁止しています(いわゆるバスケット条項)。
また、証券取引法は、平成13年の金庫株解禁に伴い、金庫株の取得及び処分に関する取締役会決議をインサイダー取引規制における重要事実として、その取締役会決議が公表された後でなければ、その会社の株式の売買をできないと定めています。

※公開買付とは?

有価証券市場外において株券等を買い集める行為をいいます。
不特定多数の者から、一定の会社の一定の株券等を買い集めようとする行為については、会社支配に影響を及ぼすものであることから、インサイダー取引の対象となっています。

※公表とは?

(1)上場会社等の代表取締役が、2つ以上の報道機関に対して重要事実を公開したときから12時間が経過すること、
(2)重要事実にかかる事項の記載がある有価証券報告書等が公衆縦覧に供された場合、
(3)重要事実が証券取引所のホームページ上で公開された場合、をいいます。


3. 違反行為をした場合

(1) 刑事罰(198条以下)
 インサイダー取引による刑事罰については、1) 3年以下の懲役、2) 300万円以下の罰金、3) 1)2)の併料、が規定されています。
 また、違反行為によって得た財産については、没収・追徴の定めも置かれています。
なお、この没収・追徴の対象は、インサイダー取引によって得た利益ではなく、犯罪行為により得た財産そのものです(たとえば、1000万円を投資して株式を購入し、株価が1300万円になった時点で株式を売却した場合は、売買金額である1300万円全体が没収・追徴の対象となります)。
 法人等の代表者等が違反行為をした場合は、その行為者を罰するほか、その法人に対しても3億円以下の罰金刑が科される、と規定されています(両罰規定)。
(2) 行政処分−課徴金制度(175条以下)
 さらに、平成17年施行の法改正により、行政処分としての課徴金制度が設けられました。
この制度創設の目的は、比較的軽微なインサイダー取引の取締りを容易にし、市場の信頼性を維持することにあると言われております。
 この制度の流れについては、証券取引等監視委員会の調査及び勧告により、内閣総理大臣(の委任を受けた金融庁長官)が、審判手続を開始させ、手続の結果、インサイダー取引が認められる場合は、課徴金納付を命ずる決定が出されることとなります。 
審判手続(課徴金納付命令)に不服がある場合には、裁判所へ不服の申立をすることが可能です。
 課徴金については、インサイダー取引による経済的利得を基準として課されることになり、刑事罰との調整規定も置かれております。


4. 過去の主な摘発の事例

(1) 平成9年の東京地方裁判所の判決では、監査役である顧問弁護士が、他社が同社への第三者割当増資にともなう新株の発行をするという重要事実を知り、その公表前に、知人名義でその他社の株式を買ったという事案につき、懲役6月、執行猶予3年、追徴金2621万円とされました。

(2) 薬の副作用による死者発生という情報を知った薬メーカの社員と取引先等が、その事実が公表される前に薬メーカの株式を売却したという事案につき、証取法のバスケット条項を適用し、略式命令で罰金20万〜50万円となり、又、医師も情報受領者として処罰されました。


宮入バルブ新株発行差止申立事件決定

新株の発行価額が「特ニ有利ナル発行価額」に該当し、株主総会の特別決議を経ないで行われた場合、商法二八〇条ノ二第二項に違反するものとして、新株発行の差止めが認められた事例


1. 被保全権利

 商法二八〇条ノ二第二項にいう「特ニ有利ナル発行価額」とは、公正な発行価額よりも特に低い価額をいうところ、株式会社が普通株式を発行し、当該株式が証券取引所に上場され証券市場において流通している場合において、新株の公正な発行価額は、旧株主の利益を保護する観点から本来は旧株の時価と等しくなければならないが、新株を消化し資本調達の目的を達成する見地からは、原則として発行価額を時価より多少引き下げる必要もある。
そこで、この場合における公正な発行価額は、発行価額決定前の当該会社の株式価格、上記株価の騰落習性、売買出来高の実績、会社の資産状態、収益状態、配当状況、発行済株式数、新たに発行される株式数、株式市況の動向、これらから予測される新株の消化可能性等の諸事情を総合し、旧株主の利益と会社が有利な資本調達を実現するという利益との調和の中に求められるべきものである。
もっとも、上記の公正な発行価額の趣旨に照らすと、公正な発行価額というには、その価額が、原則として、発行価額決定直前の株価に近接していることが必要であると解すべきである(最高裁判所昭和五〇年四月八日第三小法廷判決・民集二九巻四号三五〇頁参照)。
 本件において、公正な発行価額を決定するに当たって、本件新株発行決議の直前日である平成一六年五月一七日の株価、又は本件新株発行決議以前の相当期間内における株価を排除すべき理由は見出しがたい。
 以上によれば、本件発行価額三九三円は、公正な発行価額より特に低い価額すなわち「特ニ有利ナル発行価額」といわざるを得ず、商法三四三条の特別決議を経ないで行われた本件新株発行は、商法二八〇条ノ二第二項に違反するというべきである。 
 そして、本件新株発行が行われた場合、既存株主が株価下落による不利益を被ることは明らかであり、債権者らは、債務者に対して商法二八〇条ノ一〇に基づく本件新株発行の差止請求権を有する。


2. 保全の必要性

 本件新株発行決定時の株価と本件発行価額との差額の程度及び従前の発行済株式総数一六三〇万株に対し本件新株発行に係る発行予定総数が七七〇万株であるというその数量にかんがみると、既存株主の被る不利益は極めて重大なものであるから、著しい損害を被るおそれを認めることができる。
 そして、本件新株発行の払込期日は、平成一六年六月三日と定められていて間近に迫っているところ、その期日が到来し、引受人が払込みをして本件新株発行の効力が生じた場合、その後は商法二八〇条ノ一〇に基づく差止請求権それ自体が無意味なものとなるだけでなく、商法三四三条所定の特別決議を経ないで株主以外の者に特に有利なる発行価額をもって新株を発行したことは、新株発行無効の訴え(商法二八〇条ノ一五)における無効原因とならないと解されるから、本件新株発行の手続を差し止めるについての保全の必要性も認めることができる。


<参考・日本証券業協会の自主ルール>

 第三者割当増資の取り扱いに関する指針
「発行価額は、当該増資に係る取締役会決議の直前日の価額(直前日における売買がない場合は、当該直前日からさかのぼった直近日)に0.9を乗じた額以上の価額であること。
ただし、直近日又は直近日までの価額又は売買高の状況等を勘案し、当該決議の日から発行価額を決定するために適当な期間(最長6ヶ月)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができる」

商法改正情報

法定準備金の積立額

これまで利益準備金は、資本の四分の一に達するまで積み立てることを強制されていましたが、平成13年の商法改正後は資本準備金と利益準備金の合計額が資本の四分の一に達するまで積み立てられれば良いこととなりました。つまり、資本準備金が資本の四分の一に達していれば、利益準備金は積み立てなくても良いことになったのです。また、資本の四分の一を超える部分は、株主総会の決議及び平成14年の商法改正による債権者保護手続を経た上で取り崩すことが可能になったため、資本欠損の補填だけでなく自社株取得の財源等にも活用できることになりました。

額面株式の廃止

平成13年の商法改正で、これまで慣れ親しんだ額面株式が廃止され、すべてが無額面株式で統一されることになり、当然、株券に「金五萬円」などといった券面額を記載することは意味を有しなくなりました。
 また、これまで株式分割を行うときは1株当たりの純資産が5万円以上なければならないという純資産額規制がありましたが、これも撤廃され、会社が出資単位を自由に決めることができるようになりました。更には会社設立時の株式発行価額も5万円である必要がなくなりました。
 これまでは、純資産額規制のため、株式分割の方法をとることが出来ずに1円での株主割当増資や無額面株式を発行しての増資で、創業者の持株比率を調整するケースが多々見られましたが、これからは純資産額規制の撤廃及び額面株式の廃止により自由に資本政策を組み立てることが可能となりました。
 なお、発行済みの額面式株券については、代わりに新たな株券を発行するべきですが、現在流通している株券のままでも当該株券記載の券面額が意味を有しなくなるだけで、そのまま流通させていても無効ということにはなりません。

株式分割の簡易化

 1株当たりの純資産が5万円を下回ってはならないという純資産額規制が撤廃され、券面額も意味を有しなくなりましたことから、会社が株式の大きさを自由に決めることができるようになったため、株式分割を取締役会の決議で自由に行うことが可能となりました。高い株価でファイナンスを行ったベンチャー企業や発行株数を増やしたい企業、また創業者の持株比率を維持するため株式分割後に外部資本を導入するなど、資本政策の上で色々な活用方法が取れることになりました。

単元株制度

これまでの単位株制度が廃止され、平成13年の商法改正により新に単元株制度が創設されました。純資産額規制の撤廃及び額面株式の廃止により、株式の大きさが自由になりましたが、他方、あまり株式を細分化すると多数の株主を管理するため多くのコストが掛かることになります。そこで、株式管理コストを節減するため、一定の数の株式を一単元の株式として定款で定め、一単元に一個の議決権を与えるものとしたのが、単元株制度です。
 但し、一単元の株式数は1000株及び発行済株式総数の200分の1に相当する数を超えることは出来ません。小口株主が多数存在する会社では、この単元株制度を導入することで、議決権を単元株以上保有する株主に限定できるため、株主総会の運営コストを節減できることも可能になります。

種類株式の導入

 これまでも、優先株や無議決権株式など数種の株式を発行することは可能でしたが、平成13年の商法改正で、議決権制限株式等の様々な種類の株式が発行できるようになりました。
 特に、議決権制限株式という種類株式が認められて、利益配当がなくても議決権が復活しないこととする株式を発行することができるようになりました。改正前の無議決権株式は、利益配当の優先権のある株式であり、無配の場合には、議決権が復活することになっていました。しかし、今回の商法改正では、利益配当がなくても議決権が復活しない株式を発行することも可能となっています。これにより、経営権の安定化を図りながら増資による資金調達を行うことも可能となりました。
 但し、議決権制限株式は、発行済株式総数の2分の1を超えることができないとの制限が課されています。

株主総会の招集

株主総会の特別決議の定足数については、従前、総株主の議決権の過半数を有する株主が出席すると規定されており、普通決議の場合とは異なり、定款による定足数の緩和は認められていませんでした。しかし、平成14年の商法改正により定款でこの定足数を総株主の議決権の3分の1まで切り下げることが可能となりました。また、株主総会の招集手続についても一部簡素化が図られ、これまで会日の2週間前までに通知をすることを要するとされていましたが、株式譲渡制限会社では定款でこの期間を1週間にまで短縮できることが出来るようになりました。更に、議決権を行使することができる全ての株主の同意があれば、招集手続を経ずに株主総会を開催することも出来ることになりました。

授権株式数の制限の撤廃と増資決議の有効期限延長

平成13年の商法改正で、株式の譲渡制限がある会社は、会社が発行する株式の総数、つまり授権枠を発行済み株式総数の4倍を超えても定めることが出来るようになりました。
 これまでは、授権株式数の制限があるため、増資と増資との間に授権枠拡大のための株主総会の決議を行うなどして対応していましたが、これからは授権株式数の制限が撤廃されたことから、機動的に資金調達の為の増資を行うことが出来るようになりました。但し、従来同様、株主以外の第三者に対して、新株を発行する場合は、株主総会の特別決議が必要です。
 また、有利発行の増資決議も、これまでは特別決議の日から六ヶ月以内に払い込まれる最初の新株発行に限られていましたが、特別決議の有効期間を1年以内、しかも数度にわたる増資でも有効と改正されました。これにより、株主総会の特別決議で授権された範囲内であれば、特別決議後1年以内の有効期間内である限り、取締役会の決議だけで機動的に増資を行うことが可能となりました。今までは、毎月のように臨時株主総会を開催して増資の決議を行っていたベンチャー企業も見うけられましたが、その繁忙さはこの改正で軽減されると思われます。

役員の責任軽減

平成5年の商法改正により、株主代表訴訟の提起が容易になりましたことから、役員個人が数億円単位の損害賠償責任を負う可能性が現実のものとなりました。過大な責任追及は役員の経営判断としての意思決定を萎縮させたり、役員就任を敬遠させたりする動きとなりましたことから、平成13年の商法改正により、一定の要件を満たした場合は、役員の賠償責任を軽減できることになりました。これには、(1)対象となる事案に対し、事後的に株主総会の特別決議を経て軽減する、(2)株主総会の特別決議によって、事前に役員責任軽減の条項を定款に定めておき、取締役会の決議で責任を軽減させる、(3)社外取締役については、定款で定められた軽減の範囲内で制限された責任を負う旨の契約を会社と社外取締役との間で締結することを定款で定める、という三つの方法があります。
 しかし、いずれの場合も取締役が職務を行うにつき、善意にして重大な過失がないことが要件とされています。また、軽減の範囲は、損害賠償を負うべき額から代表取締役につき報酬等の6年分、常勤取締役は4年分、社外取締役は2年分を控除した額を限度とすることとなっています。つまり、代表取締役は報酬等の6年分、常勤取締役は4年分、社外取締役は2年分の責任をそれぞれ少なくとも負うということです。ここで言う報酬額は、その算定にあたって役員報酬だけでなく退職金やストック・オプションで得た利益も含まれます。

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